皆さんは、「ヒートショック」という言葉をご存知でしょうか?その名前からもわかるように、恐ろしい健康障害のように感じるかもしれませんが、実は私たちの身近に潜んでいる非常に危険な問題です。ヒートショックの原因と予防策についてご紹介します。
ヒートショックとは?
交通事故による死亡者数よりも、家庭内事故による死亡者数の方が多いことをご存知でしょうか?厚生労働省の人口動態統計によれば、過去20年間で交通事故による死亡者数は約1/3に減少しているのに対し、家庭内の不慮の事故による死亡者数は増加傾向にあります。特に溺死・溺水に関しては、過去20年でなんと1.7倍に増加し、2016年には交通事故による死亡者数を上回り、近年では5,000人前後で高止まりしています。
増加し続ける家庭内事故(単位:人)
出典:厚生労働省人口動態統計より
全国の入浴中の急死者数は年間約19,000人に上ります。家庭内の事故、特に溺死・溺水については、日本の高齢化社会とヒートショックが密接に結びついています。
ヒートショックは、急激な温度差により、血圧の変動や脈拍の乱れが生じ、脳出血・脳梗塞・心筋梗塞などを引き起こす可能性があります。特に冬場は、外気と室内の温度差が大きくなり、入浴時に急激な寒暖差が起こりやすくなります。
入浴中の急死者のうち、65歳以上の高齢者が9割を占めており、高齢化社会との関連が深く考えられています。高齢者の体温調節能力が低下しているため、ヒートショックの影響がより大きく現れることが考えられます。
ヒートショックの原因
ヒートショックの発生メカニズムを紐解くと、冬場に特に冷え込みやすい場所として、浴室・脱衣所・トイレなどが挙げられます。暖かい部屋から温度の低い浴室・脱衣所などに移動すると、血圧が上昇します。その後、温かい湯に入ることで血圧が低下します。これにより、家の中を移動するだけでも知らないうちに血圧の乱高下を招いてしまいます。
冬場の増加は、室内外の温度差が大きくなるためにヒートショックが引き起こされやすくなるからです。暖房を十分に行わない場所では、室内の寒暖差が顕著になります。特に浴室や脱衣所では暖房をあまり使用せずに過ごすことが多いため、血圧の変動が激しくなり、ヒートショックが発生しやすくなります。
ヒートショックになりやすい人
急激な温度差による血圧への影響は、誰もが受ける可能性がありますが、特に高齢者は注意が必要といわれています。理由として挙げられるのは、一般的に高齢者ほど血圧が上昇しやすい傾向にあります。そして、高血圧な人ほど血圧の変動は大きくなり重篤化のリスクが高くなります。また、加齢による血管の硬化は、血管の収縮性を弱めるため、こちらも疾患のリスクを高めることになります。
高齢者でなくとも下記のような方は、年齢に関係なく注意が必要といわれています。
・高血圧の方
・血圧や心臓に持病をもっている方
・糖尿病や肥満症の方
・不整脈の方
・睡眠時無呼吸症候群をかかえている方
・飲酒後にお風呂に入る習慣がある方
・熱いお風呂が好きな方
・寒い家に住んでいる方
ヒートショックの対策方法
●入浴時
予防対策として、入浴前に浴室や脱衣所を暖めることが重要です。暖房がある場合は室温を上げておき、暖房がない場合はシャワーからの給湯で温度を上げることができます。入浴前に水分を摂取し、長時間の長風呂を避け、お湯の温度を高め過ぎないようにしましょう。さらに、冬場にはお家の断熱性を向上させることも効果的です。断熱材や窓のリフォームによって断熱性能を向上させ、温度差を軽減しましょう。
●トイレ
トイレも冷えやすい場所ですが、暖房設備があれば暖めるか、ヒーターを置くと良いです。いきみ過ぎにも注意し、断熱材や窓のリフォームも効果的です。安全なトイレ環境を整えましょう。
室内の温度差を減らすには窓の断熱
室内の温度差を減らすには、窓による断熱が最も重要です。冬の暖房時には窓から熱の約5割が逃げてしまいます。暖房器具を考える前に、まず窓の断熱をしっかりと行うことがキーポイントです。
出典:日本建材・住宅設備産業協会
ヒートショックを防ぐには内窓がおすすめ
窓の断熱を手軽に行う方法として、お家の単板ガラスを断熱ガラスに交換することが効果的ですが、サッシの交換は費用と工事が大掛かりであるため、内窓を設置する方法が選択肢としてあります。内窓は窓の内側にもう一つ窓を設置することで、結露対策と断熱効果を高める手軽な方法で、マンションなどでも届出不要で工事が可能です。