近年、さまざまなタイプの窓枠がラインナップされています。その中でも最新の窓枠は「樹脂サッシ」と呼ばれるものです。樹脂サッシはどのような特徴を持つのでしょうか?
一般的なアルミサッシと比較して、樹脂サッシの異なる点は何でしょうか?
今回は、窓枠の材質ごとの特徴や、適切なガラスの選択について考察します。
樹脂サッシとは
窓の歴史
最初の窓枠は木製が主流でしたが、昭和30年代からアルミ製の窓枠が住宅用に普及し、昭和50年頃には新築住宅の窓のほとんどがアルミサッシになりました。当時の窓ガラスは単層のものが使用されていました。
欧米では1970年のオイルショックを契機に、エネルギー削減を目的とした住宅の断熱化が始まり、窓枠の材質は樹脂製に切り替わり、ガラスも複層ガラスからトリプル複層ガラスへと進化しました。
現在、欧米や韓国では樹脂窓が主流となっており、樹脂サッシの性能向上に力を入れてきた日本も、性能面で大幅に遅れを取っていると言われています。
現在の日本の窓
日本でも住宅の省エネ化とともに、窓の断熱化が急速に進んでいます。
その中でも注目されている樹脂サッシ窓は、塩化ビニル樹脂で作られたサッシ枠に複層ガラスなどが組み合わされた窓です。
ドイツを起源とする省エネ推進国である樹脂サッシ窓は、断熱性と気密性に優れており、厳しい寒冷地である北欧や北米、最近では中国や韓国でも急速に普及が進んでいます。日本では、北海道を中心に普及率が約90%を占めています。
樹脂サッシのメリット・デメリット
現在、住宅用途で急速に普及している樹脂サッシ窓は、アルミサッシ→アルミ熱遮断構造サッシ→アルミ樹脂複合構造サッシ(複合サッシ)→樹脂サッシという経緯を持っています。
各種サッシの構成について
アルミサッシ:サッシ全体がアルミニウムで構成されます。アルミニウムは耐久性があり加工が容易ですが、熱を伝えやすいというデメリットがあり、暑さや寒さをサッシで遮断することはできません。
アルミ樹脂複合サッシ:外側がアルミニウムで内側が樹脂で構成されたサッシです。アルミニウムの耐久性と樹脂の熱の伝えにくさという利点を組み合わせたサッシで、東北以西の新築住宅で普及が広がっています。
樹脂サッシ:サッシ全体が樹脂で構成されます。樹脂の熱の伝えにくさを生かしたサッシです。
樹脂サッシのメリット
断熱性が高い
窓はサッシとガラスの組み合わせで構成されていますが、サッシとガラスの組み合わせでの性能値についてみてみましょう。
■各種サッシ・ガラスの組み合わせによる窓の断熱性能
樹脂サッシは、アルミサッシと比較して窓(サッシ+ガラス)の性能が約2.6倍の断熱性能を持ちます。樹脂は熱を伝えにくく、その熱の伝わりにくさはアルミの1/1000程度とされています。高い断熱性能によるメリットとしては以下の点が挙げられます。
- 室内温度の安定性:断熱性能が高いため、室内の温度が安定しやすくなります。外部の気温の変化による影響を受けにくくなります。
- 省エネルギー効果:高い断熱性能により、冷暖房の使用頻度や強度を減らすことができます。結果として光熱費の削減につながります。
- ヒートショックの対策:冬の寒さや温度差によるヒートショックを軽減する効果があります。窓からの冷気の侵入を抑え、室内の快適さを維持します。
樹脂サッシの断熱性能の向上は、居住空間の快適性向上やエネルギー効率の向上に貢献し、住宅の省エネルギー化に重要な役割を果たしています。
結露が生じにくくなる
樹脂サッシは熱の伝わりが少なく、室内側サッシの表面も冷えにくいため、結露の発生を軽減することができます。
結露は、室内の湿度が高く、窓の表面が冷えることで水蒸気が凝結して生じます。樹脂サッシの断熱性能の高さにより、窓枠やガラスの表面温度が上昇し、結露の発生を抑えることができます。また、樹脂の材質自体が冷たくなりにくいため、室内側サッシの表面温度が低下しにくくなります。
これにより、樹脂サッシを使用することで、窓周辺の結露の発生を軽減し、室内の快適性を向上させることができます。結露が生じにくい環境では、壁や床の濡れ、カビの発生、木材の腐食などの問題も予防できます。
樹脂サッシの結露対策効果は、冬季や湿度の高い環境において特に顕著です。結露によるトラブルを軽減し、健康的な住環境を維持するために、樹脂サッシの採用は有益です。
防音効果が期待できる
樹脂サッシは非常に気密性が高いため、防音効果が期待できます。気密性の高さは、サッシの隙間から漏れる空気の量が少ないことを意味し、それによってサッシの隙間から漏れる音も減少します。そのため、樹脂サッシを使用することで、屋内への外部騒音の侵入を軽減できます。
樹脂サッシのデメリット
紫外線に弱くアルミサッシに比べて劣化が早い
樹脂サッシにはいくつかのデメリットも存在します。一つは、紫外線に弱くアルミサッシに比べて劣化が早いという点です。樹脂は紫外線の影響を受けやすく、色の変化や素材の硬化、変形などの劣化が生じる可能性があります。特に南面に設置する場合は、日射熱対策が必要となります。
価格が高い
もう一つのデメリットは、価格が高いことです。樹脂サッシは比較的新しい商品であり、日本の市場においてはアルミサッシと比較して価格が高くなっています。海外では樹脂サッシが主流となっているため、日本と比較すると歴史が浅く、価格帯が高い傾向にあります。
樹脂サッシのデメリットを克服する方法としては、より耐候性に優れた樹脂材料の開発や、紫外線対策の改善が考えられます。また、競争の進展による価格の引き下げも期待されます。技術の進歩や市場の変化により、これらのデメリットを解消し、樹脂サッシの利便性と効果をさらに向上させる可能性があります。
樹脂サッシの耐久性
樹脂サッシの寿命
樹脂サッシの耐久性は一般的には約30〜50年と言われていますが、使用箇所や状況によって劣化が早まることもあります。樹脂サッシの劣化の主な原因は紫外線によるもので、劣化が進むと「チョーキング」と呼ばれる現象(白い粉がサッシの表面に発生)が起きることがあります。特に太陽光が当たりやすい箇所に設置する場合は、紫外線対策が必要です。
樹脂サッシの紫外線対策方法
紫外線対策としては、劣化が進んできたタイミングで塗装を行う方法がありますが、樹脂サッシの塗装には高い技術や知識が必要であり、塗料の耐用年数も5〜10年程度とされています。したがって、定期的なメンテナンスが必要です。
また、紫外線対策としては、樹脂サッシと併用する形でアルミサッシやアルミ樹脂複合サッシを使用する方法もあります。アルミサッシやアルミ樹脂複合サッシは耐久性に優れていますが、断熱性能や結露の問題があるため、使用箇所や状況に応じて使い分けることがおすすめです。
アルミサッシ・アルミ樹脂複合サッシとの比較
アルミサッシとの比較
アルミサッシと比較すると、樹脂サッシの優位性は主に「耐久性」「軽さ」「価格」です。樹脂サッシはアルミサッシに比べて耐久性に劣る一方、軽量であり、価格も比較的低く抑えられます。しかし、樹脂サッシは紫外線に弱いため、使用箇所や状況によっては劣化が早くなるという弱点があります。
一方、アルミサッシは軽量で丈夫なため、耐久性に優れています。しかし、アルミそのものが熱を伝えやすい素材であるため、窓としての断熱性能が劣り、結露しやすい窓となる可能性があります。
アルミ樹脂複合サッシは、樹脂サッシとアルミサッシの特徴を組み合わせたものです。室外側にアルミ、室内側に樹脂を使用することで、アルミの耐久性と樹脂の熱の伝えにくさの利点を生かしたサッシとなります。性能値としては、樹脂サッシに比べて断熱性能は3割ほど劣りますが、樹脂サッシの弱点である紫外線対応が必要な箇所(南面、西面など)には、複合サッシの採用がおすすめです。
最近では、日本でも新築住宅に対する省エネ性能が求められており、樹脂サッシやアルミ樹脂複合サッシの採用は減少していく可能性が考えられます。より高い断熱性能や耐久性を求める場合には、断熱性能の高い窓材や、二重窓などの組み合わせも検討することが重要です。
アルミ樹脂複合サッシとの比較
アルミ樹脂複合サッシと比較すると、性能値では樹脂サッシで構成された窓に比べて断熱性能は約30%劣りますが、アルミで室外側、樹脂で室内側を構成することで、アルミの耐
久性と樹脂の熱伝達の少なさという利点を生かしたサッシになります。
樹脂サッシの弱点である紫外線対策が必要な箇所(南面、西面など)には、複合サッシの採用を検討することもおすすめです。
つまり、樹脂サッシのような高い断熱性を持つサッシには、同様に高いグレードのガラスを選択することで、性能を最大限引き出すことが可能です。